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米中気候協定を読み解く

ポール・ジョフィ

This blog post was originally published in English on November 12, 2014.

米国人が使う「now you’re talking(そうだね)」というあいづちの裏には、「ようやく本気を出したね」という意味が込められている。気候変動対策に本腰を入れるとは、言葉による約束を実行に移すということであり、それも思い切った策でなければならない。

そして、まさにこれこそが、オバマ大統領と習近平国家主席による昨日の首脳会談を通じて北京から発せられたシグナルである。

オバマ大統領は米国の温室効果ガス排出量を、2025年までに2005年水準比で26%~28%削減することを約束した。一方、習主席はCO2排出量について、2030年前後をピークとして削減するとともに(期限の前倒しも視野に入れている)、中国のエネルギー消費量に占める非化石燃料の割合を2030年までに20%程度に拡大するとの目標を掲げた。次のステップが重要ではあるものの、この協定自体、米中両国はもとより、世界的に見て気候変動対策が大きく前進したといえるだろう。

将来に向けた大きな一歩

今回の合意は、歴史上の大きな転換点となる可能性を秘めている。その根拠を理解するには、この協定に盛り込まれた中国に関する合意事項を見てみる必要がある。これまで気候問題に関して国際的にコミットしてこなかった中国が、わずか数年という期間の中で、2009年にはコペンハーゲン国連気候変動会議で炭素強度の引下げに同意し、今度は排出量のピーク年を約束してみせた。そのうえ、中国は言葉だけではなく、国際社会の検証が可能な目標を提案している。

こうした態度の変化の背景には、切羽詰まった事情と国益が存在する。中国の各都市は石炭燃焼に起因する深刻な大気汚染、石炭輸入への過度の依存によるエネルギー安全保障上の重大な問題、東部都市を襲うと言われる海面上昇に関する科学的警告、食糧安全保障を脅かす破壊的な干ばつなどだ。そして、一方では、低炭素エネルギーに伴う技術革新や健康上の効果を世界に先駆けて推進することによる経済的利益も期待されている。

同時に、米中関係という視点からも重要な意味を持つ。米国内では以前から、クリーン・エネルギーの研究開発(R&D)分野における中国との協力関係に対して党派を超えた支持があり、ごく最近では、省エネビル、電気自動車、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術での協力がある。今回の新協定は新たなCCSイニシアチブを追加するものであるが、単に研究開発にとどまらず、気候目標について前例のない合意を含んでいる。

さらに、今回の発表は国際的な気候対策にも重要な影響を及ぼす。世界の2大強国が行動の必要性を認識した事実は、風水害、海面上昇、干ばつ、その他の気候変動による影響から人々を守る強力かつ普遍的な気候合意の確立に向けて交渉の緊急性を増すはずである。来月のリマ会議(ペルー)および2015年12月のパリ会議が新たな希望を生み出している。

中国の新たな目標は達成可能

中国の発表についてはすでに、「甘すぎる」あるいは「厳しすぎる」とメディアから疑問が提起されている。実態を確認しておこう。マサチューセッツ工科大学(MIT)と中国の清華大学の研究者たちによる分析では、炭素強度の引き下げに向けた現在の取組みを継続すれば、中国の炭素排出量は2030年から2040年の期間に横ばいになるという。さらに、追加的な対策を講じれば、2025~2035年の期間に排出量は頭打ちになり、その後減少に転ずることもこの研究で明らかになっている。

中国はこうした方向にすでに舵を切っていることからして、この早期の目標達成はまったく可能である。中国の2013年における再生エネルギーへの投資額は世界最高であり、世界全体の21%を占める。中国はこの年、12ギガワットの太陽光発電計画を立ち上げたが、これは他国における単一年の最大新設規模の1.5倍に相当する。また、石炭についても、中国の石炭発電の新設は2006年に90ギガワット余りでピークに達した後、2013年には36.5ギガワットに激減している。中国は現在、地域におけるキャップ・アンド・トレードの試験的取組みを全国規模に拡大するとともに、石炭消費量に上限を設ける計画を推進中である。

鍵を握る実行力

両国の取組みについて、疑問点はまだある。中国が自らの約束を達成するために採用するであろう対策について、もう少し詳しく把握する必要があるだろう。中国はその計画のいくつかをこの数カ月間に公表してきたが、相互の整合性はどうだろうか。新たなイニシアチブとして追加されるのはどのようなものか。そして、スケジュールはどうなるのか。さらにもう一つ重要な点として、20%という非化石エネルギー目標の内訳はどうなるのであろうか。

米国と中国、および最近発表されたEUの排出削減目標を足し合わせたとしても、交渉で提示した当初のコミットメントと、深刻な気候変動を回避するのに不可欠と科学者たちが主張する数値との間には今なお開きがある。近々、こうした疑問点を解消するための助言が米国や中国に多方面から寄せられることは間違いなく、両国は真摯に耳を傾けるべきである。とはいえ、この度の米中協定は暗礁に乗り上げた状況を打破し、他国による対策の道を切り開いたことは確かである。対策の効果が明らかになって機運も盛り上がれば、米中両国がさらに踏み込んだ行動に出ることも夢ではなかろう。

私がかつて海軍に在籍していたとき、ある若い将校が難しい任務を命じられたことがあった。年上の親切な将校が彼を脇に呼び、忠告した。「問題にがむしゃらに取り組んだってだめだ。まずは解決する方法を探ることだ」と。米国と中国がすでに着手したこと、そして今後、国際社会も団結して取り組むであろうことも、おそらくこれと同じではないだろうか。多くの国々が長年、行動に移れない理由について話し合ってきた。昨日の発表は、問題を解決する新たな段階へと足を踏み入れたことを示している。じっとしていては何も生まれない。私たちの目の前には、これまで先送りしてきた仕事が山のように積み重なっているのである。

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